そもそも「マインドフルネス」ってなに?
小池ショコラティエール(以下小池)
本日はよろしくお願いします。最近よく耳にする「マインドフルネス」ですが、瞑想のように「頭を空っぽにする」というイメージがあって、忙しい日常の中で実践するのは少しハードルが高いようにも感じてしまいます。本来はどういったものなのでしょうか?
ヨガ講師 植田さん(以下植田)
そう思われる方はとても多いです! でも、難しく考える必要は一切ありません。マインドフルネスとは一言でいうと、「『いま、この瞬間』に意識を向け、評価をせずに、ただありのままを受け入れること」です。そのようにすることで心が満たされ心が穏やかになるように思います。
小池
スポーツ選手や先進企業でも「マインドフルネス」が取り入れられていますよね。
植田
私たちは日常生活の中で、「今日の夜ご飯は何にしよう」「何時にお迎えに行かなきゃ」と、常に今以外の場所に意識が散漫になっています。その散漫になっている自分に気づき、今ある呼吸へと意識を「戻す力」をつけるトレーニングなんです。
目的意識を持ちすぎると、筋肉が緊張してリラックスできなくなってしまうので、深く呼吸をしようと無理に力むのではなく、ただ「今の呼吸を見つめる」。それが、ヨガの目的である「心を自分の思う方向に向ける」に繋がっていきます。
小池
なるほど! それなら、特別な道具がなくても日常の中でできそうですね。
植田
そうですね。そして、その最も身近で楽しいアプローチ方法が、今日ご紹介する「マインドフルイーティング(食べる瞑想)」なんです。
マインドフルネスを始めたときのことを話すヨガ講師の植田さん
五感をフルに使って味わう食べる瞑想「マインドフルイーティング」
小池
「食べる瞑想」……! 食べることで頭をリラックスさせるなんて、最高ですね(笑)。具体的にはどのように行うのですか?
植田
ふふ、楽しいですよね。マインドフルイーティングは、食べるものを「五感(視覚・触覚・聴覚・嗅覚・味覚)」のすべてを使って、極限まで丁寧に味わう作業です。普段の生活ではスマホやテレビを見ながら、考え事をしながらの「ながら食い」をしていませんか?そこに気づき、手放す練習をします。
小池
スマートフォンを置いて、目の前の食べ物だけに集中するんですね。
植田
そうです。今回はぜひ、小池さんが作られているメリーさんのチョコレートを使って体験してみましょう。
実践! チョコレートでマインドフルネス
※ここからは、実際に2人がチョコレートを手に取りながらお話しします。皆さんも是非チョコレートをご用意して試してみてください。
植田
では、チョコレートを一つ、手にとってみてください。ここから6つのステップで進めていきます。
ステップ1:【見る(視覚)】
まずは口に入れず、じっとパッケージ、チョコレートを見つめます。色合い、ツヤ、形、光の反射はどうですか?
ステップ2:【触る(触覚)】
次に、指先で触れてみてください。
指先に伝わる温度、そして自分の体温で、表面がほんの少し、じんわりと溶け始める感覚がダイレクトに伝わってきます。
ステップ3:【聞く(聴覚)】
もし板チョコや、少し硬めのチョコなら、耳元でパキッと割ってみてください。どんな音がしますか?
ステップ4:【嗅ぐ(嗅覚)】
鼻に近づけて、深く深呼吸をするように香りを吸い込んでみてください。
ステップ5:【味わう(味覚)】
お待たせしました。いよいよ口に入れます。ですが、すぐに噛み砕かないでください。舌の上に乗せ、体温でゆっくりと溶かしていきます。ゆっくりと溶けていくテクスチャー(歯触り、味わい)に五感を集中させます。
ステップ6:【気づきを受け入れ、評価を避ける】
頭に浮かぶ「甘い」「四角い」「外側から溶けていく」といった事象の言葉をそのまま受け止め、良い・悪いの評価をしない。
そして食べ終わった後に、「私はこう感じた」「香りが良かった」と周りの人と感想を共有するのも素晴らしいコミュニケーションになります。同じ味を食べていても、人によって感じ方が全く違って面白いんですよ。
チョコレートが口の中で溶けていくその「数秒、数十秒」の間、小池さんの頭の中には、仕事の悩みを忘れていたはずです。
小池
本当にそうですね! 今、私の世界にはこのチョコレートの味と香りと温度しかありませんでした。チョコレートを食べることに集中することでその行動の中でどのような状態があるのか、そこから自分自信がどのような気持ちになるのか自ずと整理されて、思考がすっきりした気がします。
マインドフルイーティングに、おすすめのチョコレートとは?
植田
小池さん、ショコラティエールの視点から、特におすすめのマインドフルイーティングで食べたいチョコレートはありますか?
小池
色々試してみたのですが、プレーンチョコレートがおすすめです。シンプルな味わいが、マインドフルネスの「嗅覚」「味覚」をより研ぎ澄ませてくれるように思います。
植田
シンプルな味わいはより主体的に五感を研ぎ澄ませると思いますのでいいと思います。
小池
お話を聞いていて、私たちの「試食(味見)」という行為にも通ずる部分が非常にあるなと感じました。私たちは商品の開発段階で、味わいや食感を極限まで研ぎ澄ませて評価をします。情報や狙いに捉われず、「食べた現実を素直に受け入れる」という姿勢は、まさにマインドフルイーティングそのものですね。
植田
小池さんは普段、チョコレートを試食する際にどのような部分に注意しているのですか?
小池
開発段階では、まず見た目をチェックします。そして意外かもしれませんが、製品の「断面」をとても大切にしています。ガナッシュを切ったときの滑らかさや、クランチなどの素材が入っている場合は湿気ていないかなど、断面に品質の全てが現れるからです。
だから普段は、半分噛んでその断面を目で確認してから、口の中で転がすようにしてテクスチャー(口どけや粘度)を感じ取っています。
ただ、普段の業務での試食だと、何十種類もの試作品を前にして、どうしても「このフレーバーが」「口どけが」とすぐに言語化してディスカッションしがちです。最初に何を言うかで切り口や注目されるポイントが引っ張られてしまうこともあって。
もしこのマインドフルイーティングのように、全員が一度完全に沈黙して、五感を研ぎ澄ませて食べたら、全く新しい発見や調和の判断ができるかもしれないなと思いました。
おわりに
小池
本日は植田さんに、チョコレートを使ったマインドフルネスを教えていただきました。忙しい毎日の中で、少しだけスマートフォンを置いて、お気に入りの一粒を五感で味わう。これなら今日からすぐにでも始められそうです。
植田
忙しい毎日だからこそ、自分の機嫌を自分で取る時間を、ぜひ毎日の習慣にしてみてくださいね。チョコレートを味わうために使う時間は、自分を大切にケアしている時間でもあります。
小池
皆さんも気圧や気温の変化に負けず、チョコレートを相棒にして、この季節の変わり目を心地よく乗り切っていきましょう。植田さん、本日は本当にありがとうございました!