SALON DU CHOCOLAT

Language

Chocolatier ショコラティエのご紹介

Shigeyuki Oishi

大石 茂之

Shigeyuki Oishi

大石 茂之

1995
株式会社メリーチョコレートカムパニーに入社。入社以後、生産本部大森工場でチョコレートの生産に携わる。
2000
メリーチョコレートが初めてサロン・デュ・ショコラ パリに出展した当初からプロジェクトメンバーとして参加し、2003年にはチョコレートショーインニューヨークにも参加。
2010
製品開発室(現 研究開発部)に配属。メリーチョコレートの製品の開発に従事する。
2014
シェフショコラティエとして活躍する。同年、サロン・デュ・ショコラ パリで発表されるチョコレートの格付けで、最高位のゴールドタブレットのランク獲得に貢献した。和の食材や和菓子のモチーフをチョコレートに取り入れた繊細な味わいと精巧な技術が特徴。
2016
チョコレート品評会にはみたらしと抹茶を合わせ「野点(のだて)」をイメージしたボンボンを創作しチョコレートの格付けでゴールドタブレットを獲得、及びC.C.C.アワードを受賞した。
2017
花が咲き誇り、光輝く東京をチョコレートで表現。2年連続のゴールドタブレット受賞となる。
  • 2016年C.C.C.アワード
    受賞について
  • エクスペリエンスジャポン
    を振り返って
  • サロン・デュ・ショコラ2017
    に向けて
2016年C.C.C.アワード
受賞について

2016年C.C.C.アワードの
受賞について、
振り返っていただきました。

C.C.C.アワードを受賞したときは
どんなお気持ちでしたか?

結果発表を待つショコラティエたちの控室があるのですが、その顔ぶれがすごかったんです。ジャン・ポール・エヴァンやピエール・マルコリーニなど、チョコレート界の有名人が一堂に会していて。それを見て「なんだかすごい場にきているんだな」と実感しましたね。そういう場で、狭き門であるC.C.C.アワードを受賞できたことは本当に嬉しく思います。

日本独自の素材やテーマを選んだ背景やこだわりは?

まず、今回も抹茶は使いたいなと思っていました。日本のブランドとして初めてサロン・デュ・ショコラに出展したとき以来、ずっと抹茶の作品を出し続けているんですが、最初の頃は抹茶自体がフランスに知られていなかったので、口に入れて「なんだこれは」と顔をしかめる人も多かったんです。それが今ではすっかりサロン・デュ・ショコラにも定着したので、今年はその抹茶を使って新しい試みをしたいなと思い「野点(のだて)」をテーマに選びました。

なぜ野点(のだて)をテーマに?

私は普段から美術鑑賞が趣味で、とくに茶器が大好きなんですね。日本庭園を訪ねることもあり、そこで見た青空の下でお茶とお菓子を頂く野点というとても風情のあるものを、チョコレートにできたらいいなとふと思ったんです。野点ではお菓子を食べてからお茶を味わうので、舌の上でそれを楽しめるようにしました。まず「みたらし」の甘みがきて、その後にそれを洗い流すような「宇治抹茶」の味わいを時間差で感じられるものにしています。

サロン・デュ・ショコラに参加するなかで、他のショコラティエとの交流はありますか?

作り方や食材について質問を受けることはもちろん、もっとこれを強めた方がいいとか、こういうふうにした方がおいしくなるんじゃないかというアドバイスをされたりもします。そういう会話がメリーの商品のアイデアにつながることもあるので、毎回刺激をもらっています。

エクスペリエンスジャポン
を振り返って

今回はサロン・デュ・ショコラの
イベントプログラムである
「エクスペリエンスジャポン」セミナー
の講師も務めた大石氏。
日本酒好きを活かし、
チョコレートと一緒に
日本酒を楽しむ新しい食べ方を提案し、
パリのトップショコラティエからも
高く評価された。

エクスペリエンスジャポンは初めての試みかと思いますが、どのようなセミナーだったのでしょうか。

今回は、チョコレートと日本酒のマリアージュについてのデモンストレーションと講義を行いました。
当日は3種類の組み合わせを用意しました。「みなも」というゆずと日本酒を素材にしたチョコレートと、そのチョコに使われている「丸眞正宗」。アーモンドとぬちまーす(塩)が入ったホワイトチョコレートの板チョコと、男山本店「蒼天伝」。そして、出羽桜酒造「一路」という大吟醸酒と、それを入れて作った抹茶のガナッシュのマリアージュです。見た目にも楽しんでもらいたいと思いましたので、錫の器で日本酒を飲んで頂いたり、抹茶のガナッシュはお猪口に乗せて出したりと、テーブルウエアにも和を感じられるものを使いました。

参加者の反応は
いかがでしたか?

日本酒を飲んだことがない方も多かったので、お米のお酒がこんなに美味しいのかということで感動してもらえましたね。お米の旨みを感じる日本酒はカカオの美味しさを引き立てるんです。

大石さんがチョコレートづくりにおいて大切にしていることは?

とにかく「美味しいものをつくる」というのが一番にあります。日本人が美味しいと思うものは他の国の人もきっと美味しいと思うはずという気持ちがあるので、和の食材も積極的に取り込んでいます。
あとは季節のもの、旬のものを大事にしていきたいということですね。日本人には、桜の時期にはお花見を楽しんで、十五夜にはお月見をしてという、風情を感じる心があります。そういう気持ちはチョコレートづくりにおいても大切にしたいと思っています。

創作のインスピレーションが生まれるのはどんなときでしょうか。

職場から最寄り駅まで約1.5キロの道のりを歩く通勤時や、家の近くを散歩するときに感じる「匂い」はいつもヒントになります。食材とは限らず、葉っぱや、きれいな花や……。花びらをお酒につけて香りを抽出してみたり、葉っぱのイメージの香りを加えてみたりと、いろいろな取り込み方も考えます。
市場やスーパー、旅行先の物産展、酒蔵にもよく足を運びます。散歩も旅行も食べることもお酒を飲むことも大好きで、それがすべてチョコレートづくりのインスピレーションにつながっているんですね。職場でも私の席のまわりにはお酒がおいてあるんです。最初はみんなに「え?」という顔でみられましたけど、最近はもう大丈夫です。だって仕事ですから(笑)。

サロン・デュ・ショコラ2017
に向けて

2017年のサロン・デュ・ショコラももうすぐですが、次回作は決まっているのでしょうか?

今回の作品は、まず、柚子と山椒をあわせたものです。柚子はフランスでもすっかり知られていますが、果物というよりも香辛料に近い使われ方をしているんですね。それを今回は、果物として食べる柚子という形で表現しました。つぎは桜と甜茶を合わせたもの。桜の花びらというと塩漬けのようなものを想像されるかもしれませんが、そうではなく、桜の花の香り自体が香るようなものです。そしてアーモンドと三種のプラリネ。ヘーゼルをキャラメリゼしたものとチョコレートを合わせた層と、アーモンドと胡麻と焦がし醤油を合わせた層を組み合わせています。
最後に少し冒険的なのが、梅干しとチョコレートを合わせたもの。そこに味醂を作るときにできる味醂粕を使って、まろやかさと深みのある味わいを足しています。それでも梅干しを食べたことのないフランス人にはかなり衝撃的な味かもしれません。でも2016年のカボス同様、初めて食べるものや、インパクトのあるものを提案するのは良いことだと思っているんです。

また新しいチャレンジですね。

興味を持ってもらいたいという思いもあります。これはなんだろう?と疑問を持つことは印象に残りますから。いつも新しいことをやってみせるときはドキドキですけどね(笑)。

最後にサロン・デュ・ショコラ2017への意気込みを教えてください。

当然のことながら、今年もまた一番いい賞を取りたいなと思っています。
そして、今年も様々な試みをしたチョコレートを持っていくので、それをみなさんに美味しく食べて頂きたいなと思います。やっぱりそこがいちばんですね。